STAP細胞ができないことが最終的に明らかになった。

STAP revisited. nature. vol. 525 7570
http://www.nature.com/news/stap-revisited-1.18400


今回、論文をねつ造した小保方氏の上司で、この事件では責任を感じて自殺した笹井芳樹(ささい よしき)氏がどうして騙されたかについて書いてみたい。

ただこれは、あくまでも、日本の科学技術の発展のためである。

私は、日本が誇る発生学者で、自分が名前を連ねているといっても、己が知らないところでの部下の不祥事について、自ら命を絶って詫びているのに、さらに批判をして、死者に鞭打つようなまねをしたくはない。

ユダヤ人が学問の世界で優秀であるということはよく言われている。
ノーベル賞を取る人も多い。その理由の一つとして、年配の大学者による若い研修者に対する無償の支援があるといえる。

たとえば、学問分野の後継者となるべき俊英にたいして、本を共著で出して何章かかいてあげたりするのである。

単に弟子の悪口しかいわないような駄目教授と比べものにならない。

私でさえ、そう思うのだから、世界的な学者であった笹井氏であれば、ますますそう思っただろう。うやらましく思ったのではないか。

そして、自分が指導する立場になったら、若い人を何としても応援しようと考えたとしても不思議ではない。

それで、笹井氏はお人よしだった。だから意欲があるように見える若者に騙されたのだと思う。

それに、大発見をする学者だから間違えるのである。

たいしたことない研究者は間違えない。(笑)


もしかしたら、私だったら、騙されなかった可能性がある。

笹井氏は、嘘とごまかしで生きてきた人物に出会ったことがなかったのだろう。

きっと彼は、心が美しすぎたのだ。


このような事件が起きた背景に日本の科学の歴史がまだ浅いということがあると思う。

もしこれが武道であったなら、何か月も偽物がわからないということはないだろう。

これは、武道家が優れているというのではない。それまでの蓄積があるのである。我が国には武道の歴史が長く、歴史的には命がけの勝負をしてきたのである。

武道家にとっては、実力を見抜くのは本質的な問題である。

そして、武道指導者は、意欲のある若者に入れあげて失望することが役目だといえる。(笑)

だから、武道指導者は、たとえしごきやリンチで弟子を殺したり、レイブしたりすることがあっても、弟子が偽物ならわかってしまうわけだ。


これは、科学の世界ではまだ伝統が不十分であるといえる。


さて、小保方氏を理研の研究員の選考のさい、手続きを踏んでいないということが話題になった。

しかし、私が言いたいのは、これで、やり方を杓子定規的なものにするべきではないといことだ。

もちろん、見直すことは必要だが、個人の責任で推薦するということをなくしてはならない。

優れた個人の感性で、何度も失敗しながら進むことだ。形式主義で優れた研究などでるはずがないのだ。